【藤田祥平インタビュー】青春をFPSに費やした文筆家は、現在のeスポーツをどう見るか

「ゲームで生きていく」という事がまだ夢物語でしかなかった時代に、青春と人並み外れた情熱をゲームに捧げた男がいた。

その男の名前は藤田祥平。またの名を、Rollstone。2009年に開催された『Wolfenstein: Enemy Territory』の世界大会「ClanBase ET NationsCup XII」では日本代表メンバーとして選ばれたほどの、筋金入りのゲーマーだ。

現在、藤田氏は “文筆家” として精力的に活動しており、小説やゲームレビューなどを執筆。2018年4月には、『電遊奇譚』『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』と2本の著作を世に送り出した。

今回はそんな彼に、現在の仕事について、そしてeスポーツへの想いについて話を伺った。

職業 “文筆家” とは?

――藤田さんは文筆家が職業ということで、これまでにゲームレビューから小説まで幅広く文章を執筆されています。現在は主にどのような文章を書かれているのでしょうか。

藤田 小説を出す前はライター職だけで食べていたので、その頃はライティング業務が10割でした。ですが、先日出版した『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』と『電遊奇譚』の印税が入りまして。お陰様でちょっとのんびりできているので、ライターとしての仕事は減りつつあります。

最近は文芸関係の編集者から、「小説を書いてくれたら嬉しいです」といったメールも来るようになりました。ですので今は、徐々にライターから小説家にシフトしつつある状態です。

――なるほど、では今は次回作に向けて色々と構想を練っている期間ということでしょうか。

藤田 そんな感じです。だから、ちょっとボーッとしてますね。このあいだ、次回作の取材も兼ねて、日本縦断ドライブという趣旨で東北方面を旅したりもしました。

――文章を書くときに気をつけていることはありますか?

藤田 とにかく綺麗な文章、美しい文章です。とにかく良いやつ。語彙、漢字、文体、構成、形式、内容、全てにおいて。

あとは、なんやろなあ……。文章の種類によって気にかけることは少しずつ違いますね。たとえばレビューを書くときには、作品の面白さを伝えることがいちばん重要ですし。

あとは、パラグラフのはじめの1行は、とくにわかりやすく書くことを意識しています。イントロが良くなければ誰も最後まで聞いてくれません。

――僕もゲームライターの端くれなので、原稿の完成度を上げたい欲求はよくわかります。ですが、1本の記事にリソースをかけすぎると、原稿料と書く時間が釣り合わなくなりませんか?

藤田 そうですね。今の僕は完全にラッキーなだけであって、本が出ていなかったら、お金がなくて路頭に迷っていたと思います(笑)。

ただ、なぜこの幸運が来たかというと、どんな記事でも「ここの句読点はちゃうやろ」と、こだわっていたからじゃないですか。その仕事の成果がそれなりのものだったから、誰かに見つけてもらえた。

誰にも見つけてもらえないほど運が悪かったら、諦めて割腹……するつもりでした。

2ヶ月でダイヤモンドまで駆け抜けた『オーバーウォッチ』

――ここからはeスポーツにまつわる話をお伺いしたいと思います。eスポーツとして扱われるタイトルの中でよくプレイしているゲームはありますか?

藤田 今は『オーバーウォッチ』をプレイしています。始めて2ヶ月くらいなんですけど、ランクはダイヤの一歩手前ぐらいです(※)。

※『オーバーウォッチ』では、プレイヤーの戦績に応じてスキルレート(SR)が増減し、SRに応じてランク付けされるモード「ライバル・プレイ」(いわゆるランクマッチ)が存在する。大まかに言うと、ダイヤモンドランクは上位14%ほどの実力。

――2ヶ月でダイヤ手前ですか!やはり高校時代にひたすらプレイされていた『Wolfenstein: Enemy Territory』で培ったエイム力が活きているのでしょうか。

藤田 そういうことでしょう(笑)。

DPSとタンクはすぐ埋まるので、最初はサポートのアナを使ってたんですが、それだと勝てなくて。ヒットスキャンDPSを使うようになってからは一気にランクが上がりましたね。この1週間で300はSRが上がりました。

<※DPS、タンクはキャラクター性能におけるカテゴライズのひとつ。簡単に説明すると、DPSは相手にダメージを与えやすい花形、タンクは敵の注意を引きつける縁の下の力持ち、サポートはその両者のプレイを支援する黒子といった役割。ヒットスキャンDPSはDPSの中でも特に、クリックした瞬間にエイムした先に着弾するもののこと。

ついこのあいだ、チームに所属してプレイするようになって、サポートをやろうとしたら、チームメイトが「お前、もうヒットスキャン使いなよ」って言ってくれたんです。

――チームに所属されているんですか!どのようなチームなのでしょうか?

藤田 海外のチームで「Behemoth」というところです。Twitchで『オーバーウォッチ』の配信をしていたら、お声がかかって。入ってみたらアメリカ人だけのチームで、「どうしよ……」となりましたけど。

こちらの朝方、向こうの深夜の時間帯に毎日3~4時間ぐらいは練習しています。ここのところは『オーバーウォッチ』が1日の始まりになるような状態ですね。

――プロゲーマーを目指して練習をしているのでしょうか?

藤田 それについては、成り行きに任せています。「プロになれるんやったら、なれたらいいな」って感じですけど、今はやりたいだけやるって状態です。ざんねんながら、選手としてのピークはとうに過ぎてしまいましたから。

――なるほど、先ほどヒットスキャンDPSが得意とおっしゃられていましたが、プロジェクタイルのキャラもプレイされますか?

※プロジェクタイルとは、クリックから着弾まで時間差があるもののこと。ロケットランチャーやグレネードランチャーなどを想像すると分かりやすい。

藤田 チームからは「今はヒットスキャンでいいけど、そのうちプロジェクタイルも練習してね」と言われているので、ハンゾーとファラを練習中です。

『Wolfenstein: Enemy Territory』をやり込んだ身としては、プロジェクタイルのエイム――いわゆる偏差打ち(※)はなかなか慣れません。もうジャンクラットとか信じられないですね。不潔に感じてしまうほどです。

※偏差打ち:相手の動きや軌道を読み、着弾までのタイムラグを考慮に入れて狙うこと。着弾に時間差があるプロジェクタイル独特のエイム。

――『電遊綺譚』では、『Team Fortress 2』をプレイしていた話も書かれています。『Team Fortress 2』はソルジャーやデモマンがプロジェクタイルですよね。

藤田 あの当時でも「プロジェクタイルはちょっと嫌やな」と思っていました。プロジェクタイルのエイムが求められる競技性の高いゲームは、ほとんど触っていなかったので。
――もう少し大枠の話をお聞きしたいと思います。『Overwatch』はeスポーツのタイトルとして、どこが優れていると思われますか?

藤田 過去のFPSでは、”キャラクターをピックする” って概念が、あまりなかったわけです。兵科(クラス)くらいはあったけれど、そんなに大差はなかった。そこにきて『オーバーウォッチ』は、MOBA(※)や格闘ゲームとおなじレベルにまでキャラクターを専門化させていて、自分のプレイスタイルに合ったキャラクターを見つけていく楽しみがあることが、ユニークで素敵だなと思いました。

※マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)とは、ステージを俯瞰しながら自キャラを操作し、敵の拠点を破壊することを目的としたゲームで、幅広い特徴・性能を有したキャラが用意されていることが多い。『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』が代表的。

――以前Twitterで『オーバーウォッチ』が過去のFPSからの引用で成立していると呟かれていましたよね。

藤田 言いましたね。たとえばソルジャー76は、あきらかに『コール オブ デューティ』シリーズから引っ張ってきたような動き。最初に触ったときは笑いました。他にもウィドウメイカーは『Quake』のレールガンっぽいですし……あとドゥームフィストのパンチしまくる感じは、格ゲーから引っ張ってきているのかな(笑)。

キャラごとに引用元のゲームがなんとなくわかって、面白いですよ。

――非常に面白い捉え方ですね。ちなみに、eスポーツを「見る側」として楽しまれたりはしますか?

藤田 今は『オーバーウォッチ』をやっているので、上手くなるためにコーチングの動画を見たり、あとは「Overwatch League」をはじめとした大会などを見て、他の人のプレイを研究しています。

楽しむことを第一に

――藤田さんはeスポーツという言葉が浸透する前から、ゲームを競技として捉える世界に浸っていました。そんな藤田さんから見て、今のeスポーツはどんな状況に見えますか。

藤田 この前、EVO(※)の取材に行かせてもらったんですが、やはり規模も賞金額も日本とは全然違っていて、力の入りようが尋常じゃないなと思いました。

※毎年アメリカ・ラスベガスで行われる格闘ゲームの祭典。

FPSジャンルに限って言えば、10年前、『Wolfenstein: Enemy Territory』でヨーロッパやアメリカの選手と話したりして、「eスポーツ以前」の競技シーンの様子についてはなんとなく聞いていました。当時はむこうも、草の根的なコミュニティイベント程度のものばかりだったのに、いまではここまでの規模になっているのかと思うと、驚かされます。

今の日本のeスポーツは10年前のアメリカの状況と同程度か、すこし大きいくらいだと思います。まだまだこれからだと思いますが、eスポーツという言葉がやり取りされるようになったのは素晴らしいことです。選手達も希望を持ってきているんじゃないでしょうか。

――eスポーツ甲子園などのイベントも動き出しつつあり、若年層のeスポーツに対する熱が高まっているように思えます。藤田さんの立場から、若いゲーマーにアドバイスをお願いします。

藤田 ゲームプレイで稼ぐこと、食べていくことを目的にすると、どこかで挫折します。見つけてもらう運も必要です。ですから、ゲームを楽しむことを第一にしましょう。

明治時代に野球が日本に入ってきたとき、野球にハマって、もう野球のことしか考えられなくなった人間を想像してみてください。今みたいにプロリーグなんてないし、食えるわけでもない。それでも彼はたぶん、楽しみながら野球をするでしょう。彼は野球を突き詰めて、極めるでしょう。すると、その経験から、彼はなにかを学び取ることができる。

だからまずは、楽しむことですね。勝利のためだけにプレイするのではなく、楽しむために勝利するのです。お金は後で……貰えるんだったら貰っておいた方が良いかな(笑)。

――『電遊綺譚』には『Wolfenstein: Enemy Territory』絡みの話で、”ひとりの人間には、たったひとつだけでいいから、なにか心から誇れるものが必要なんだ。おれはあるひとつのことを、ここまで突き詰めてやったんだ”というフレーズが出てきます。これはeスポーツにも繋がるすごく印象的な言葉ですよね。

藤田 やっぱり、その言葉は正しいんだと思いますよ。でも、きっと僕たちは、ゲームをやっている間にそうしたことを意識しているわけではなくて、ただやりたいからやっているだけなんですよ。

ゲームをしている当人は夢中で、何も考えていなくて、それがたまたま結果に繋がる。あるいは、繋がらない……実際のところ、結果はどうでもいいんです。自分に嘘をつかないで、楽しいと思っていることをやれば、それでいい。そうすれば、なんとかやっていけます。

――それでは最後に、これからの目標を教えてください。

藤田 生きていくことです。生きていければもう大丈夫です。慎ましく生きていければ。できるだけのんびりと、できるだけ好きなことができるように。これだけです。そのために、良いゲームプレイをして、良い文章を書く。僕の目標はそんなところです。みなさんはどうでしょう。

それと、お仕事募集中です!これ書いといてね!

――ありがとうございました!

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『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』
ゲームエッセイ『電遊綺譚』