男性プレイヤーに劣らない実力を持つことから、国内外にも多くのファンを持つ。勝ってる時には全力で喜び、劣勢に立たされている状況下では悔しい感情が表情に出てしまう程の負けず嫌い。そんな闘志むき出しの人間らしい姿が観客を魅了し続けている。
今回、GAME STARではプロゲーマーになって半年ほど経過した《たぬかな》という《ニューヒロイン》の素顔に迫った。
2016年11月13日、女性鉄拳プレイヤー《たぬかな》選手がプロゲーミングチーム《CYCLOPS athlete gaming》と契約を交わしたことが発表された。
四国出身の24歳。たぬかな選手は、鉄拳では4人目のプロゲーマーであり、女性としては2人目のプロゲーマーである。
プロゲーマーになるまで
――まずは、たぬかなさんがプロゲーマーになるまでの歩みを教えてください。
私、建築の学校に通ってました。建築科は男の子が多いんですけど、そこでは特に、男の子の間で《鉄拳6 BLOODLINE REBELLION》が流行ってました。友人と一緒にゲームセンターに行った時にやってたりしたので、私もやってみようと思って始めました。
高校生の時は全体からみれば中堅くらいでしたが、高校生仲間の中だと一番でしたね。毎週末は鉄拳プレイヤーと一緒に県外へ遠征してました。徳島全一になったのは高校卒業したくらい。香川全一の人と対戦したり、遠征先もちょくちょく広げていきました。
もともと建築士になりたくて、建築の学校通って卒業して、設計事務所で働いていたんです。設計していたんですけど、会社がちょっと潰れてしまって・・・(笑)なので、資格とかはめっちゃ持っています。
――資格は何を持っているんですか?
クレーンとユンボと危険物も(笑)あと、トレース技能検定3級と2級建築施工管理技士なんていう履歴書に書ける資格も持っているんです。二級建築士は実務経験が無いと取れないんですけど、会社が潰れちゃったのでとれなかったんです(笑)ただ、3DCADとか使えます。もちろん、設計もできます(笑)
そんな感じで、会社が潰れちゃったので新しい会社を見つけて、そこで働き出したんです。けど、そこが土日休みじゃなかったんですね。鉄拳の大会って土日に行われるんですけど、「あんま出れんけど、まぁいいか」って諦めていました。
それで鉄拳をあんまりプレイしなくなっていたんですけど、鉄拳7の稼働が開始して、初めて店舗間のオンライン対戦ができるようになったんです。対戦相手がオンラインだから、平日でも相手がいるじゃないですか。面白くなって、またやり始めたんですよ。
――鉄拳7からオンライン対戦ができて、気持ちが変わっていったと。
そうですね、大会とか出たいなーってやっぱ正直に思い始めました。そんとき仕事が結構うまくいってて、ちょうどキャリアアップの試験に受かって、役職みたいなのが上がって、ちょっと給料も上がってたんですね。
なので、仕事をやめるのはちょっともったいないから、ゲームはもういいかなって思ってたんですけど、そこで、プロゲーマーの話を聞いて、やってみようかなーって思い立って応募しました。
全然受かると思っていなくて「え、鉄拳やん」「大阪やん」って感じで、記念に応募しちゃいました(笑)
――プロゲーマーの募集を見つけたきっかけって何かあったんですか?
鉄拳してる人から「こんなんあったよ」みたいな感じで聞いて。
親が元々ゲームをあんまり良く思ってなくて。ずっとやってるのに、なんにもならないからなんですけど。「もう、24、5歳っていったら、もうそろそろ結婚せなあかん年なのに、なんでお前はゲームばっかしてんねん」みたいな感じで。それで「これ通らんかったら、ゲームやめろよ」って言われてて。「うん。そうやな。もうそろそろやめて、結婚するわー」って言ったんですよ。で、通ってしまって(笑)
――結婚というお話も出ていたんですか?
その時に、結婚しよう、みたいな言ってくれる彼氏がいたんですけど。私黙って受けに行っちゃって、全て決まってから言ったんですよ。激おこですよ(笑)
そりゃまぁ、激おこですよね・・・。
「おまえ、それじゃ俺とゲームとどっち取るんだ」って言われて「んー、やっぱ人生1回やからやっぱゲームだと思う。ごめん」って言って。
悪いことをしました。
――衝撃的なお話ですね。
いやでもホンマにまぁ、やっとかんと後悔するなって思ったんで。それで、仕事も辞めて、来てしまったという(笑)
ここまで、自分が高校時代、青春を投げ出してやってきたことだったので、考えてみたら辞めるっていうことが凄く重いことだったんですよね。
ゲームやってて、良い事っていっぱいあったんですよ。普段関われない色々な年代の人と知り合えて、県外の人と知り合えて・・・。
全部やめて、普通に結婚してっていうのは嫌じゃないんですけど、色々したいなって思って。
――結婚して普通に生活している姿想像ができなかったんですね。
そうですね。ゲームしかしてない青春だったんで(笑)
県外とか出るのも、24歳って行ったらラストチャンスだと思うんですよね。人生一回きりなので、自分にしかできないことをやってみたいと思って挑戦しました。
――どんな青春だったんですか?
学校時代は、学校終わってからゲームセンター行くか、バイトに行くかの2パターンでした。バイトで稼いだお金は全部ゲーム代に消えていきます(笑)
高校時代は門限が20時だったんです。家から自転車をかっ飛ばして30分くらいの所にゲームセンターがあるんで、16時半ごろとかに学校終わって、17時にゲームセンターに着いて、2時間半くらい鉄拳やって、急いで自転車で帰る。これを繰り返していました。
バイトがある日は、門限が22時まで伸びるんです。だから、長い時間鉄拳をやりたい時はバイトがあるって嘘ついたりしてましたね(笑)
でも、そのバイトっていう嘘がバレてしまったときがあって、ゲームセンターから帰るときに車に轢かれてしまったことがあって、親にバレてしまってやばかったこととかもあります(笑)
普通に轢かれたくらいだったら黙って帰ればよかったんですけど…。
めっちゃ軽傷なのに病院連れていかれて…。一番怖かったのはお父さんが病室に入ってくる瞬間です。特に顔が!(笑)そんな感じで厳しい親だったんですけど、その目をかいくぐりつつ鉄拳やってました。
休みの日は遠征と称して、鉄拳プレイヤーの方に連れて行ってもらって県外の人と対戦してました。それ以外やってなかったような気がします(笑)
当時はオンラインとかもないので、ランクを上げるためには同じくらいのランクのプレイヤーと対戦しなければいけなかったんです。
徳島に同じくらいのランクのプレイヤーがいなくなると、ランクを上げるためには県外に行くしかないんですよ!
――徳島では敵無しだったんですね。
私が徳島全一になったのは高校卒業してすぐくらいでした。
高校のときは中堅くらいでしたね、高校生連中の中では男の子もいっぱいやってましたけど、みんなやってくれなくなってしまって。「お前と戦ったら金なくなるけんな!」って(笑)
――そんな戦闘民族みたいな青春時代を。
戦いしかしてないですね(笑)
――ご両親はプロゲーマーになるっていうこと自体には反対しなかったのでしょうか?
もう、やるんだったらやるとこまでやれよ、って感じの親なんです。「まぁ、もうプロゲーマーってのになれたんだったら、今まで費やしてきた時間も無駄にはならんだろう」って。「とりあえず一旦やってみろ」って言ってくれました。
プロゲーマーとしての生活
――現在のお話をお聞かせ下さい。プロゲーマーとしてフルタイムで活動してると思いますが、一日のスケジュールはどんな感じでしょうか?
練習する時は、夕方の4時くらいからゲームセンターに行って閉店の12時までやっていますね。大体、8時間くらいは練習しています。
ちょっと遠いんですけど、行きつけのゲームセンターに配信設備があるので、そこで配信しながら練習させてもらっています。
――朝は何時くらいに起きてます?
今日は9時位に起きましたけど、いつも12時位です。もう朝ではないです(笑)
――4時まで何してます?
朝風呂はいって、朝ごはんじゃないけどご飯食べて、ぐだぐだして…そういう感じですね(笑)
ゲームセンターから帰ってからはうまい人たちの動画とか見てます。動画研究とかめっちゃします。ついつい、おもしろ動画とか観て…「違う違う!あかんよ!」ってなっちゃうんですけど(笑)
大体夜中の3時位に寝てます。ゲームしてるとどうしても寝る時間がそういう時間になっちゃいますね。普通の人がゲームする時間帯って、20時から22時が多いじゃないですか。
昼間行ってもオンラインでも対戦相手がいないので、結局夜やらないといけないんです。
だから寝る時間が遅くなってしまって、お肌の調子が…(笑)
12時に帰るとマックとかやってるじゃないですか、ポテト安いから、食べちゃうじゃないですか!
――それは自制の問題ですね(笑)
帰り道にあるんですよ!日本橋!
――普段はゲームセンターで練習されてるとのことですが、どういう練習をされていますか?
店舗間のオンライン対戦で練習しています、…そればっかりですね。
大阪で教えてくれる人が二人くらいいるので、呼んでセコンドしてもらったりもします。
これいまどうしたらいい?みたいな相談をしています。
――たぬかなさんにとって、プロゲーマーとはどんな存在ですか?
みんなにゲームの楽しさを伝える存在ですかね。
――プロゲーマーとして強く意識していることはありますか?
強くなることですね。
プロっていう以上、強さ有りきだと思うんですよね。私は女性だからという理由でプロになってる所が大きいと思っているんですけど・・・。
腕がめっちゃあって「男でもなれたんちゃうか」ってくらいになりたいんですよね。なので、今実力をつけることを頑張ってます。
――海外にも行かれてますよね。
めっちゃ行ってますね。台湾、中国、韓国、アメリカに行きました。
――どこが一番面白かったですか?
ちょっと昔ですけど、台湾ですね。台湾は親日の人が多くて、みんな凄く良くしてくれました。
19歳くらいだったんですけど、何にも分からなかった私にみんなめっちゃ優しくしてくれて、食べ物めっちゃくれて「うわあ、めっちゃおいしい!!」みたいな。
そこからちょくちょくお仕事を頂くようになりました。
その時の相手はあまり強くなかったので、あまり気負わず楽しく「はっはー!」って言いながら、すべてをなぎ倒してましたね(笑)
あの頃は若かったのでコスプレとかもしましたよ。
この頃はう~ん!若かった(笑)
――面白そうですね(笑)最後に、プロゲーマーとして今後の目標を教えてください。
海外大会や国内大会で優勝します。
強さがあるって思われたいですね。先ほど言った通り、強さがあってこそ、プロだと思っていますので。
今はともかく実績が欲しい!
その一言です。
韓国のトップゲーマーとか、ノビさんに比べるとちょっと落ちるなというのはわかってるんです。それは今練習で補っている所なんですけど。
ただ、落ちるなって言っても、大会とかで絶対勝てないことはないと思っているんです。勝率三割くらいはあると思うんですよ。そこを五分五分まで持っていって、大会で優勝を勝ち取りたいと思っています。もうちょっと自力を付けてっていうところでしょうか。
鉄拳は大会が少ないので、基本的にどの大会も強いプレイヤーが勝ち上がってくるんです。
厳しいんですけど、やっぱりどこかで優勝したいです。
《たぬかなプロフィール》
名前:たぬかな
職業:プロゲーマー
誕生日:11月21日
高校時代から鉄拳シリーズをプレイし始め、2016年11月にプロゲーミングチーム《CYCLOPS athlete gaming》と契約し、プロゲーマーとなった。鉄拳では4人目のプロゲーマーであり、女性プロゲーマーでは2人目。
《大会成績》
2016年
鉄拳7 Fated Retribution THE KING OF IRON FIST TOURNAMENT 大阪ラウンド 女子1on1部門 鉄拳7FR 準優勝(シャオユウ)
Douyu U-League 3 The King of World(中国) 鉄拳TAG2 優勝(シャオユウ、リリ)
2017年
Final Round XX(アメリカ) 鉄拳7FR 2on2 準優勝 たぬかな(シャオユウ)/Anakin
Final Round XX(アメリカ) 鉄拳7FR 9位(シャオユウ)
Combo Breaker 2017(アメリカ) 鉄拳7FR 3位(シャオユウ)