『アイドル伝説えり子』 必見エピソード紹介

それでは、以下から「アイドル伝説えり子」の必見エピソードを紹介していきたいと思います。

第1話 「悲しみの前奏曲」
第2話 「運命の序曲」
第3話 「パパに捧げる鎮魂歌」

~あらすじ~

聖愛女学院の中学部に通う田村えり子は、芸能プロダクションの社長である父・雄介と母・美奈子の愛情を一身に受けて、何不自由なく 育った少女でした。

そんな彼女が中学三年生となる年、雄介は田村プロをあげての一大イベントとして海上フロート型の巨大複合施設・マリンライブステージを 完成させました。新たなる田村プロの飛躍を喜ぶえり子。ところが、そのオープニングコンサート開催の前夜、突如として悲劇が田村家を襲います。

なんと祝賀パーティ会場へ向かう途中、雄介夫妻の乗った車は交叉点でトラックと正面衝突し、雄介は即死、美奈子は意識不明の重態となって しまったのです。たった一人残される形となり、悲嘆に暮れるえり子。しかし、これは悲劇の序曲にすぎませんでした。

翌週、雄介の喪が明けると伯父・項介は様々なあくどい手段を駆使して田村プロの乗っ取りを図ります。と同時に、項介は主を失った雄介宅へと 乗り込み、えり子をひたすら苛め抜こうと画策するのでした。

数日後、亡き雄介の追悼という意味も込めてマリンライブステージでのオープニングコンサートが開催されることになりました。 ところが運命の女神はどこまで非情なのか、 会場内は大パニックに陥ってしまいました。

このままではオープニングコンサートが滅茶苦茶になってしまう。えり子は父の夢だったオープニングコンサートだけは成功させようと、無人の ステージに向かい、かつて母親の美奈子が歌っていた大ヒット曲「涙の半分」を熱唱するのでした。

彼女の堂々としたステージパフォーマンス、そしてなにより抜群の歌唱センスは人々の心を引き付け、奇跡的にもパニックは沈静化したのでした。

ところが、なんという運命の皮肉でしょう、この出来事が項介の野望に火を点けてしまったのです。項介はえり子の才能を利用するべく、 独断で彼女を田村プロの歌手としてデビューさせようと企むのでした。はたして、えり子の運命はいかに…。

~ちょっと一言二言~

まさに波乱の幕開けと形容するに相応しいオープニングの3話です。幸せの絶頂からどん底への転落、そして次々と襲い掛かる悲劇の嵐。 これほど怒涛の展開をわずか3話の間に詰め込んでいるため物語の密度は半端なものではなく、とにかくスタッフの意気込みに圧倒されて しまいます。

また、先にも書いたように「えり子」の特徴にド派手(というかクドい)演出がありまして、その片鱗が第1話の、それも序盤から炸裂しています。 それが、えり子と麗が初めて顔を合わせるシーン。

えり子がプロ歌手である麗の、背筋も凍らんばかりの視線に射すくめられた直後に、

「運命の稲妻が走り、波乱の幕開けを告げる!」

と気合の入ったナレーションがかぶさって…

と、本当に稲妻を走らせてしまう、このセンス!

これです。これこそが「えり子」の醍醐味の一つなのです。

冷静に見ると項介の行動がいくらなんでも非現実的すぎて、そのあたりで引いてしまう人もいるかもしれません。ですが、それを強引に 押し切ってしまうスタッフの気迫のみなぎる内容で、一見の価値があると思います。

第15話 「束の間の無伴奏」
第16話 「復活の詠唱」

~あらすじ~

グアムロケの最中、えり子は項介の陰謀によってトラブルに巻き込まれてしまい、週刊誌で不名誉な記事を載せられてしまいました。 スキャンダルにまみえれた清純派アイドルを使うテレビ局などあるはすもなく、えり子は次々と仕事を失っていき、さらには社長の 内田は過労で倒れてしまいます。それでも項介は攻撃の手を休めず、えり子が出演しそうな番組に自社の新人アイドルをねじ込んで 徹底的にえり子を包囲していくのでした。

そんなある日、ようやくえり子にオファーが舞い込んできます。

地方でのミニライブという小規模な内容のものでしたが、今のえり子にとっては何よりも嬉しい仕事の依頼です。ところが現地に 着いてみると、ミニライブといっても海岸で行われている着ぐるみショーの前座であり、しかも音響施設は皆無に近い状態でした。 あまりにも酷い実情にえり子は愕然とします。

続いて、えり子は岡山の地方テレビに出演することになりました。それに合わせて岡山のレコード店を回り、サイン・握手会、 店頭での新曲お披露目ライブなどを精力的にこなしていきます。

しかし、売れていないアイドルの歌に耳を傾ける人などいるはずもありません。えり子の歌声はレコード店の店頭で空しく響く どころか、朝霧麗の新曲プロモーションビデオの大音響にかき消されてしまう有様。あまりに厳しすぎる現実を目の前にして、 えり子は歌手としてやっていく自信を失うのでした…。

~ちょっと一言二言~

話を感動のカタルシスへもっていくためには、当然のことながら前段階でのタメが必要になります。主人公が不幸に見舞われながらも、 けなげに頑張って一歩一歩前へ踏み出そうと努力する姿があるからこそ、その後の成功がより感動的に見えてくるわけです。「えり子」 において、そんなタメ段階の代表となるのが、この2話だと思います。

とにもかくにも アイドルが地方をドサ回りするという展開が衝撃的で、本作が実在するアイドルのプロモート番組 であったことを考えると、その激しくチャレンジングな内容に感嘆してしまいます。レコード店の店頭で新曲パフォーマンスをすれども客の 反応は鈍く、それどころか店側のサポートも酷いものという場面などは涙なくしては見られません。

と同時に、これ以前のアイドルアニメの代表的存在である「クリィミーマミ」において、マミがデビュー時から大禍なくトントン拍子に トップの座へと上り詰めていたのとは実に対照的であることも興味深いところです。この差異はやはり、おニャン子クラブの登場によって80年代の 中頃からアイドルという職業の神聖さが崩壊していったことの、一つの表れといってよいのではないでしょうか。もうすでに、アイドルは幻想の世界 の住人ではないのだと気付いた、そんな世相の変化が垣間見えるような気がします。

第18話 「25メートルの幻想曲」

~あらすじ~

西条プロデューサーの計らいによって、えり子に全国ネットの仕事が舞い込みます。番組は「オールスター水泳大会」、えり子は その番組の中で25メートルを泳ぐことになりました。しかも西条は、驚くことに新曲発表の枠まで用意してくれていたのです。

久しぶりの朗報に沸き返る内田プロ。ところが、えり子は泳げませんでした。

キャンセルも止む無しと判断する内田たちに対し、えり子は収録までの一週間で泳げるように特訓すると誓います。えり子は水泳部のキャプテン だった中田先輩の助けを借り、壮絶な猛特訓を行います。しかし残念ながら、えり子は25メートルを泳げるようにはなりませんでした。

そして本番の日がやってきました…。

~ちょっと一言二言~

全51話に及ぶ「えり子」。仮に、その物語の中から一つだけ選べと言われたら、筆者は迷うことなくこの第18話を挙げます。過剰演出によって 「えり子」には異様な雰囲気が漂っている、とは今までも散々書いてきたことですが、この第18話は異様の一言ですますわけにはいかないような、 レッドゾーンを振り切って彼岸の世界に片足を入れてしまっているほどの無茶な代物となっているのです。

なにしろ、冒頭のナレーションからして尋常ではなく、

「(前略)そんな時、プロデューサーの西条から久方ぶりに

全国ネットのテレビ出演のチャンスが与えられた。

ところがその番組で、えり子は25メートル泳がなくてはならなかった。

えり子は泳げなかったのだ… 」

…と腰砕けになりそうなくらいに情けない話を、滝沢久美子氏がド迫力ボイスで語ってくださいます。冒頭のナレーションからして これですので、その後は推して知るべし。

地獄の特訓が始まる! と煽っておいて、えり子の最初の試練といったら…

中田先輩「顔を水につけてみな、5つ数えるまでだよ」

えり子「私は泳げる、泳げる…」(自己暗示をかける)

ジャブン(えり子、水の中に顔をつける)

中田先輩「1・2・3・4・5」

えり子「ぷはっはぁはぁ…」(えり子、顔を上げて苦しげに息をする)

中田先輩「水の中で目をつむっちゃダメだよ、目を開けなくちゃ。遊びにきてるんじゃないんだろ!」

えり子「はい…」

中田先輩「もう一回!」

もう、幼稚園児の水泳教室レベルの内容。それをスポ根アニメの猛特訓であるかのごとく大真面目で演出しているの ですから堪りません。スタッフは視聴者を笑い殺させるのが目的だったのではないのかと、ついつい勘ぐってしまいます。

…などと書いてみましたが、この第18話は終盤での盛り上げ方が凄まじく、思わず握り拳を作ってしまうような燃える内容になっていることも記しておきましょう。とにかく、アニメファンなら絶対に見ておくべきではないかと思います。

第38話 「うたかたの聖歌」
第39話 「栄光への行進曲」

~あらすじ~

「ロックンルーツ」の選考も終了し、ようやく日本へ帰国したえり子。

その後の精力的な芸能活動が実を結んで、彼女は年末のディスク大賞で新人賞の最有力候補に挙げられます。父の雄介は亡くなったものの、 不幸のどん底でもがき苦しんでいた半年前に比べると大違いといえるほどの変化。えり子は、現在の幸せに酔うようにして日々を過ごすのでした。

ところが田村プロの謝恩パーティが近付いた、ある日のこと。朝早くベッドで目覚めたえり子は、自分の体に起こった異変に気付きます。 なんと、声が出なくなっているのです…。

医者の診断によると過労からくる精神的なもので、時間が経てば声が戻るとのことでした。しかし、ディスク大賞までに病気が治るという 保障もありません。さらに声が戻らぬまま出席した謝恩パーティで、えり子は歌えなくなったことを報道陣に知られてしまいました。

それもこれも自分が幸せによって、歌に対して真剣さを失いつつあった報いなのだ。そう考えて再び絶望の底に沈みゆくえり子に、 麻美が、一樹が、中田先輩が、そしてファンの人々は励ましの言葉をかけます。皆の温かい心に触れ、えり子は涙するのでした。

そして十二月三十一日。運命のディスク大賞の日がやってきました…。

~ちょっと一言二言~

第3クールの軸となる「ロックンルーツ」編が一段落したのも束の間、またもや運命の稲妻がえり子を襲うという怒涛の展開が繰り広げられる 第38~39話です。

年末のグランプリで新人賞を受賞するというのは、アイドル物のアニメにおける山場の一つとしては定番の展開らしく、これは 「クリィミーマミ」でも同様の物語が用意されていました(当時の現実のアイドルにとっても最大の目標だったとは思います)。 ただ、そこに至るまでにもうワンステップ、ドラマを入れるあたりが、いかにも「えり子」らしいと言えるのではないでしょうか。

個人的な不満を言うなら、声を失うというショッキングなアクシデントであるにもかかわらず、わずか2話で解決してしまうのは物足りなく 感じてしまいます。もう少しじっくりと描いてくれれば(第4クールにずれこんだとしても)、よりドラマチックな物語を見せられたのでは ないかと思うのですが…。

参考までに「えり子」がリアルタイムで放送されていた1989年、ディスク大賞のモデルと思われるレコード大賞の受賞内容が どのようなものだったかというと…

・レコード大賞   WINK 「淋しい熱帯魚」

・歌唱賞       石川さゆり 「風の盆恋歌」

・最優秀新人賞  マルシア 「ふりむけばヨコハマ」

・新人賞       田村英理子、尾鷲義人、川越美和、香田晋

…となっていて、田村英理子氏は残念ながら最優秀新人賞を逃してしまったようです(当時はWINKの全盛期で、プリンセスプリンセスが 「Diamonds」を大ヒットさせていました。なんとも受賞者の顔ぶれに時代を感じざるを得ません)。

また、「えり子」は歌謡界を舞台にした作品ですから、当然のように主人公を含めた登場人物の歌唱シーンが数多く存在します。 それらの中から、独断と偏見による必見歌唱シーンをチョイスしてみました。

第48話 「感謝をこめた卒業曲」

独断と偏見で選ぶえり子のベストオブ歌唱シーンはこれ。第48話のラスト、えり子が中学の卒業記念コンサートにて自作曲「NEXT」を お披露目する場面です。ナレーションへの入り方なども見事なのですが、やはり一番の見所はイントロの振り付け。ほんの2秒程度なのに 妙に印象に残るもので、素のえり子らしさが出ている名シーンだと思います。

第20話 「潮風の交響曲」

「えり子」には数多くの歌唱シーンが登場しますが、豪華さでいえば第20話のラストに控えるライブが最高のものだと思います。 えり子・麗・洋のコラボによる「涙の半分」~えり子・麗・星吾が歌う「WARRIOR」という流れは、数ある「えり子」の名場面の中でも 屈指のもの。共に歌手自信ではなく声優による競演となっていることにも注目したいところです。

第30話 「心の雨に子守唄」

時折、えり子の歌が人の心を震わせるという演出が見られますが、それが最高に炸裂するのは第30話。初出演ドラマ「あぶない婦警さん」の最後、 超能力者の犯人を歌で説得する(すげぇ脚本…)場面です。挿入歌の「May be Dream」は最終話のエンディングソングとしても使用されていて、 こちらもまた必見の名シーンとなっています。

第1話 「悲しみの前奏曲」

「えり子」の世界を彩ったもう一人の歌姫、麗の歌唱シーンもセレクトしてみました。麗といえば第37話で「PRECIOUS DAYS」を 歌いだすシーンが印象的ですが、ここでは第1話の冒頭、マリンライブステージで迫力のリハーサルを行っているシーンを挙げて みたいと思います。ED曲「UNCHAINED HEART」がフルコーラスで聴けるというのもポイントです。

第27話 「ガラスの枯葉の哀歌」

麗を選んだのなら、もう一人の名シンガー・大沢洋の名も挙げておきたいところです(星吾は?)。洋はキャラがキャラだけに、第16話でヤクザを 圧倒する路上ライブや第38話での飛び入りなど珍場面が数多くあります。極めつけは第27話、いきなりビルの屋上でサックスを吹き鳴らし、 「BLUE MOONに照らされて」を歌いだすシーンでしょう。

なんでそんな場所に? というツッコミを受け付けぬ問答無用の演出は、数ある迷シーンの中でも最大級のインパクトです。